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EP15「光遮る真髄」

 -2019年 1/7 AM10:12 ARS本部 資料室-

剛士郎「榊君、見つかったよ。」
輝咲「これが・・・。」

 吉良司令が手にした数冊の古びた本があった。

剛士郎「私の父が未来から来るときに持ってきたものだ。
    これに未来の大半の事が書かれてある。」
輝咲「読んだことはないんですか?」
剛士郎「実はそうなんだよ。」

 苦笑いして吉良司令が言う。

剛士郎「恥ずかしい話、未来を知るのが怖くてね。この本の存在さえも忘れようとしていたんだよ。
    でも、鳳覇君がX-ドライヴァーだと知ったからには、彼に本当の未来を教えなくちゃならないと思ってね。」
輝咲「本当の未来ですか。」

 私も腕に抱えられた一番上にある本を手に取り、読んでみた。

剛士郎「榊君も調べるのを手伝ってくれないかな?」
輝咲「はい、分かりました。」


 EP15「光遮る真髄」


 -同刻 福岡県 鳳覇家-

 新年を向え、俺は今必死にシャープペンシルを走らせていた。
 と言うのも、気付かぬうちに学校は冬休みを向えていたのだ。驚くことではないが、時間間隔が狂った俺には驚きだった。
12月29日に関しては開いてない学校に向っていた、我ながら馬鹿だとしか言えない。
話が若干逸れたが、とにかく今は休んでいた分の宿題と冬休みの課題が山ほどある。
世界を守ったのだから宿題ぐらい免除してほしいものだと思いつつ、俺は殴り書きで計算していった。
 理科系は岸田様がノートを1000円で貸してくれ、国語の感想文については恵奈様が一緒にレストランに行く約束で引き受けてくれた。
真に関しては・・・、彼は言うまでもなく、何も無いのに俺のような状況に置かれている。一方レドナはすでに全ての宿題を終らせていた。
まだ始業式までには2日あったが、頑張れば今日中に終るので、真剣に取り組もうとARSから休暇ももらった。
 そんなこんなで忙しい中、週に3度は聞く着信音が流れた。

暁「もしもし?」
真「あーきーらー・・・・。」

 死に掛けた演技で喋る。

暁「何だ?」
真「宿題と・・・飯と・・・お金をください。」

 俺は答えずただ電話を切った。宿題だけで済んだなら態度は変わったかもしれない。携帯を閉じると、いきなりドアを叩く音が聞こえた。

暁「・・・?」

 あまりにも音がうるさくなってきたので、玄関に向った。誰がしているのか覗いて、相手を確認する。
ドアを開けて、隙間から光が見えたと同時に思いっきりグーでその音源を殴りつけた。

真「うぐっ!!!」
暁「近所迷惑だ。」

 倒れた真を猫を掴むようにして部屋の中に入れた。

真「いきなりぶん殴るこたぁねぇだろ!」
暁「いきなりドア叩くこたぁねぇだろ!」

 真と同じように言葉を返してやった。

真「今年始まって最大のペインだぜ・・・。」

 赤くなった顔面をさすりながら呟いた。

暁「はいはい、悪かった悪かった。宿題見せてやるから泣き止め。」
真「泣いてねぇーっつーの!」

 そういえば、真はあのクリスマスイヴの夜結局は岸田に告白してOKを貰ったそうだ。多少は岸田が真を抑制しているかとは思ったが。
やはり真は真のままでいた。


 -PM01:22 ARS本部 資料室-

 一冊はページ数は少ないが、1枚に書かれてある文の多さで、調べるのにかなり時間を要した。
自分居た世界の知らないことを並べられてあるだけに、かなり興味を持てた。
 今の本を読み終え、次の本を開いてみると、ようやく問題の本へとめぐり合えた。

輝咲「イクスドライヴァーについての報告・・・。」

 私は急いでその中身を読んだ。

輝咲「これは!!」

 私は驚きのあまり、椅子から立ち上がってしまった。

剛士郎「ど、どうしたんだね、榊君?」
輝咲「こ、これを・・・。」

 恐る恐るその本のページを開いて、司令に差し出した。

剛士郎「ん?」

-X-ドライヴァー完全体第一号-
 リネクサスのX-ドライヴァープロジェクトはついに最終フェイズを迎えた。すでに因子は完成したらしい。
X-ドライヴァーを現在で使用するため、過去の人物をX-ドライヴァーにさせるそうだ。
研究の第一人者である"鳳覇 光輝"を過去へと送り、彼の子供をX-ドライヴァー最終実験体とする。
 X-ドライヴァーの因子を体内に取り込ませ、十数年をかけて完全覚醒をさせる。覚醒した子はコールドスリープで保管し、現在で解凍する。
そして現在の戦力として活用する。
 見事実験は成功し、X-ドライヴァーである"鳳覇 暁"は神に等しい存在の1人となった。
この鳳覇 暁はコールドスリープで性格な年齢は分からないが、2015~2020年内の人物だと思われる。

剛士郎「鳳覇 光輝だと!?」


 -同刻 福岡県 鳳覇家-

暁「終った・・・!」
真「早っ!!」

 俺とは床に背中から倒れこんだ。

真「終ったんなら、俺のも手伝えよ~!」
暁「すまん、腕が痛い。」

 倒れたまま俺は答えた。
 そのまま眠りにつきそうな勢いだったが、それを遮る電話が鳴った。

真「鳴ってるぞ~。」
暁「わぁーってるよ。」

 俺は寝たまま携帯を取り出し、相手を確認した。親父からだった。体を半分起こしてから電話に出る。

暁「もしもし、親父?」
光輝「久しぶりだな暁、元気にしていたか?」

 何ヶ月ぶりか、暖かな親父の声が向こうから聞こえてきた。

暁「あぁ、元気だぜ。
  んで親父から電話なんて、何かあったのか?」
光輝「ちょっと福岡まで来ててさ。
   暇ならちょっと会わないか?」

 ちらりと真を見たが、真なら一人ウチに置いておいても何も問題はないだろう。

暁「おう、大丈夫だぜ。
  空港の方まで行こうか?」
光輝「いやぁ、実は今ちょうどそっちに向かってるんだよ。
   ただ、海の所までは来れたんだが、そこからどう行くか分からなくてね。」
暁「分かった、そこで待っててすぐ行くよ。」

 俺は電話を切った。

真「親父さん何だって?」
暁「ちょっと近くまで来てるらしいから、迎えに行ってくる。
  お前はとりあえずウチの護衛を頼む。腹が減ったら勝手に何か食べといてくれ。」
真「了解だぜっ!」

 俺は鍵を持って家を飛び出した。

 -PM01:49 福岡県 海岸-

 自転車をかっ飛ばすと、防波堤で海を眺めている男が見えた。間違いなく、あれは親父だった。
親父はいつも遠くの風景を見るのが好きだった。

暁「おーい、親父ー!」

 こっちに気付き、親父が立ち上がって、こっちに近づいてきた。

光輝「久しぶりだな、暁。」
暁「もう半年ぶりだっけか。」

 最後に会った日を思い出す。

光輝「最近どうだ、暁?」
暁「いろいろ学校とか何とかで普通な毎日送ってるよ。」

 苦笑して答えた。

光輝「そっか・・・、うん。」
暁「どうしたんだ?」
光輝「なぁ、暁。未来に行ってみたいとは思わないか?」

 突然何を言い出すかと思えば、馬鹿げた話をし始めた。

暁「は?」
光輝「俺たちの希望になってほしいんだ、暁。」
暁「な、何言ってるんだよ・・・希望が何だって?」

 嫌な予感がする。自然と自分の体が恐怖で震えているのが分かる。

光輝「もう隠し通すのも無理だな。
   暁、お前のサンクチュアリで未来を手に入れるぞ。」
暁「!?」

 予感は当たった。それも親父は俺がドライヴァーであることを前々から知っているらしい。

暁「何でそれを知ってるんだ!?」
光輝「知っているも何も、お前を希望にしたのは俺だ。
   ただ、お前がサンクチュアリに乗るのは想定外だった。」
暁「だから、その希望って何なんだよ!!」

 恐怖で逃げ出したい気持ちを抑え、俺は訊いた。

光輝「X-ドライヴァー、それが私達リネクサスの希望だ。」
暁「親父が・・・リネクサス・・・?」

 もうだめだ。何が何だか分からない。言っている意味は分かるが、それを理解できない自分がいる。

光輝「暁、俺達と一緒に来てくれ。」
暁「・・・・・。」

 親父の差し出す手が怖かった。

暁「断ったら・・・どうする。」
光輝「無理やりでも連れて行くさ。」

 俺は恐怖に負けて親父と距離をとった。

光輝「嫌なら、仕方ないな・・・。」

 親父が右手を上げた。

光輝「出でよっ、リデンスキャフトッ!!」

 空に円が現れ、中から黒と紫のカラーリングがされた機体が降りてきた。いや、サモンされたのだから機神だろう。
でも窮地に陥らないとサモンはできないはず、それなのに親父は任意でそれを成し遂げた。
 だが、これはある意味好都合なことではあった。向こうがサモンしたので、こちらが危機に陥ったということ。

暁「来いっ、アルファード!!」

 同じように、空の円から白龍が降りてきた。アルファードの腕を使ってコクピットに乗り込む。

光輝「悪いが、俺のリデンスキャフトは機神の上を行く存在だ。」

 長い両腕から繰り出されるパンチ、アルファードの太刀を一瞬で構え、それを受け止めた。

暁「何で、親父がリネクサス何かに!!」
光輝「俺はこの時代の人間ではない、未来からX-ドライヴァーを生み出すために来た者だ。」

 リデンスキャフトの腹部からビームが放たれた。回避のしようがなく、アルファードの腹部と胸部が黒くこげた。

暁「ぐっ!」

 怯んだ隙に、リデンスキャフトは戦闘機に変形した。足から翼が出てきて、腕部が折りたたまれる。
胸部が先頭となり、大雑把な形ではあるがまさに空中形態と言ったところか。
 戦闘機と化したリデンスキャフトは容赦なくアルファードに突撃してきた。

暁「やめてくれ・・・親父ぃ!!」

 海上まで押し出されると、人型へと変形してアルファードを海面にたたきつけた。

光輝「ならば、リネクサスに来い。お前は神に等しい存在なれるんだぞ?」
暁「神なんかにはなりたくないっ!!
  親父こそ目を覚ませ!!」
光輝「俺は正気だ!!」

 再び腹部のビームが放たれた。

レドナ「暁っ!!」

 ビームを大剣で弾き返す漆黒の機体が、2機の直線状に割り入った。

暁「レドナ!」
レドナ「高田から連絡があった。理由は後で話す。」

 真から連絡があったと言う事はどういうことだろう。気にはなったが、今はそれどころではない。

光輝「ディスペリオン、夜城か。
   まぁ、お前達2機が揃ったところで俺には勝てぬ!」

 腹部のビームが放たれた。今度は今までとは違い、四方に拡散した。アルファードの体勢を立て直し、ビームを交わしていく。

レドナ「暁、ノヴァで一気に蹴りをつけるぞ。」
暁「ま、待ってくれ!あいつには親父が乗ってるんだ!」
レドナ「それも分かってる!とにかく奴の武器と手足だけ落す!」

 ディスペリオンのスカート状の装甲が円を作り出した。

暁「それなら・・・!」

 アルファードの装甲を展開させる、煌く光が周囲を包む。

暁「サンクチュアリ――」
光輝「遅いな。」
レドナ「暁!!」

 ノヴァを放とうとした瞬間、さっきまで前方にいたリデンスキャフトは背後にいた。そしてゼロ距離で腹部のビームが放たれる。

暁「ぐああああっ!!」

 アルファードの背部がボロボロになる。装甲は溶け出し、保持できなくなった鞘が海中に沈んだ。

暁「こ、この速さ・・・!!」
光輝「そうさ。このリデンスキャフトは俺の希望への執念の通過点で生まれた機神!
   デフォルトでX-ドライヴァーのブラッディモードと同様の速さを繰り出せる!」

 俺はリデンスキャフトから離れようとしたが、すぐに行く手には奴の姿があった。

光輝「どうだ!私の"執念(リデンスキャフト)"は!!」

 長い腕からの拳がアルファードの頭部をへこませた。

レドナ「はぁっ!!」

 両手で大剣を構え、ディスペリオンがリデンスキャフトに斬りかかる。だが攻撃は簡単に避けられた。

光輝「遅い、遅すぎる!!」

 リデンスキャフトは後に回り込んでいた。鋭い足でディスペリオンを海面に蹴り飛ばした。

暁「親父っ!!」

 太刀で斬りにかかるが、相手は当然の如くそれを避け、真左に回って至近距離でビームを放った。

暁「ぐああっ!!」

 アルファードの左腕が吹き飛ぶ。

光輝「まだリネクサスに来るつもりは無いか?」
暁「あ・・・あたりまえ・・・だ。」
光輝「そうか・・・残念だ。ならここで消えてくれ。」

 リデンスキャフトの背中から10本もの触手の様なコードが現れた。

暁「!!」

 避ける間もなく、コードはアルファードの装甲を貫いていった。コードの先端についている棘から電流が流れた。

暁「あああぁぁぁっ!!!」

 今までに味わったことの無いほどの激痛が体を襲った。意識が朦朧とする中、真正面に紫と黒の機影が映っていた。
その機影の腹部が光った。

光輝「終わりだ、暁。」
レドナ「暁ぁぁぁっ!!」

 ビームが俺を包んでいる気がする。アルファードがボロボロに崩れ、消滅していく感じがした。

 体が引き裂かれていく感じがする。

 本当に、俺は今度こそ死んでしまったのか――


???「・・・ら・・・あき・・・」
暁「ん・・・。」
レドナ「おい、暁!!」

 薄っすらと目を開くと、黒髪の少年が俺を揺すっていた。

暁「れ、レドナ・・・?
  はっ!俺は!?」

 みわたすと、ここはディスペリオンの中らしい。周囲のモニターには深海の様子が映し出されていた。

レドナ「間一髪アルファードのコクピットだけ切り取って海中に隠れたんだ。」
    あの爆発でコイツも完全に動ける状態じゃないから、今ポセイドンが向っている。」

 見ると、ディスペリオンの右腕と左足が無くなっていた。

暁「サンキュー、レドナ。」
レドナ「礼には及ばないさ。
    今は何とかなったが、すぐに奴もお前が生きていることには気付くだろう。」
暁「大丈夫、次はもう迷わない。ブラッディモードを・・・。」
レドナ「そういう事じゃない。」

 レドナはやれやれと言った感じで続けた。

レドナ「アルファード無しでどう戦うっていうんだ・・・。」
暁「!!」

 言われて俺はやっと気付いた。あの攻撃ではコアも完全に破壊されている。つまりアルファードはもう回復しない。
とは言っても、俺にはまだ戦う術があった。

暁「でも俺はX-ドライヴァーだ。スティルネスを使えば――」
レドナ「いい加減にしろ!」

 レドナが俺の服の襟を掴んだ。

レドナ「冷静に考えて、今の俺たちじゃ何をしてもあいつには勝てない。
    余計な戦いをすれば、かえって被害が出るだけだ。」
暁「じゃあ・・・、じゃあ、どうしろっていうんだよ!!」

 その時、ディスペリオンの上で大きな機械音がした。見上げてみると、ポセイドンが到着していた。

雪乃「夜城君、今からディスペリオンを回収するわ。」


 -PM03:11 ポセイドンハンガー-

 回収されたディスペリオンは、若干は回復してきているものの、傷は大きかった。レドナもディスペリオンを心配そうに見つめている。

淳「この調子じゃ、ディスペリオンは最低2日は安静にさせておかないとな。」

 小さな端末を取り出し、各部の状況を確認してから佐久間が言った。

淳「こっちは何とかなるけど、問題はアルファードだなぁ・・・。」

 端末の画面を切り替えて、ディスペリオンから取ったさっきの戦闘データを映した。

淳「あのリデンスキャフトとやらは今の戦力をフル活用しても勝ち目は無い。」
暁「でも、次は絶対に俺もブラッディモードを・・・。」

 相手が親父だったと言う事もあって、俺はあの力を使うのを躊躇してしまった。

淳「無理だ、向こうは常にブラッディモードと同等の速さを生み出せる。
  それも機械的にだ。鳳覇君とは違って、向こうには限界がない。」

 俺は自分の力の無さを悔やんだ。右手で作る握りこぶしが痛かった。

暁「じゃあ・・・どうすれば・・・。」
剛士郎「だが、一つだけ術はある。」

 突然、ハンガーの奥から声が聞こえた。振り向くと、珍しく司令直々にポセイドンに乗り込んでいた。

淳「吉良司令、そう言いましても疑似機神の製造も今すぐにはできませんよ?」
剛士郎「いや、疑似機神ではないのだよ。」

 吉良はゆっくりと近づいてきた。

レドナ「新しい機神を奪うとでも?」
剛士郎「さすが夜城君、鋭い!だが、奪うのは機神ではない。」
暁「機神でも、疑似機神でもない・・・?」

 現存するものといえば、機神・疑似機神・機人しか思い浮かばない。というより聞かされていない。
だが、親父のリデンスキャフト相手に機人で挑むのは自殺行為だろう。となれば第四の選択肢があるということか。

剛士郎「あぁ、疑似機神を超える機神、さらにそれを超える存在――。」

 俺とレドナと夜城が剛士郎の言葉を物音一つ立てずに聞いていた。

剛士郎「"魔神機(アルティノイド)"だ。」

 初めて聞く単語がその口から出た。

暁「アルティ・・・ノイド?」
淳「何ですかそれ?」

 俺と佐久間の頭には疑問マークが浮かんだが、レドナだけは驚きの顔をしていた。

レドナ「まさか・・・!でもあれはまだ完成していない!」
剛士郎「確かに、今のリネクサスは開発段階であるだけだ。
    だが事実、アルファードやリデンスキャフトといった試作段階の存在は完成している。」
暁「俺のアルファードが!?」

 確かに、アルファードは他の機神とは若干違うという話を御袋から聞いたことがあった。

剛士郎「あぁ、その事を含めていろいろと連絡しようとしていたのだが。
    まさか既に鳳覇 光輝が行動に移していたとは。」
レドナ「お前、家に携帯忘れてただろ。」

 俺はポケットに手を突っ込んだ。入れたと思ったが家の鍵しか出てこなかった。

レドナ「真が代わりにその電話に出たんだ。そして親父に会うことを知っていた真から俺に連絡が来たということだ。」

 さっきの後で話すの内容はこういう事だったのか。

暁「そっか・・・。って、親父が行動に移すってどういうことだよ?」
剛士郎「君をX-ドライヴァーに仕立て上げたのは鳳覇 光輝だ。
    そして、君をリネクサスの切り札にしようとしていたのも同一人物というわけだ。」

 俺は言葉を失った。小さい頃からずっと敵は傍に居たということか。

剛士郎「鳳覇君は未来の破壊者だ、X-ドライヴァーとして完全覚醒した君は今からコールドスリープに入り、未来まで眠りにつく。
    目覚める頃には全てを忘れ、上の命令だけを聞く破壊者になるということだ。」
暁「そんな・・・。」

 急に自分の存在が怖くなった。ブラッディモードの驚くほどへの破壊への衝動は運命だったのだ。

剛士郎「X-ドライヴァーは機神を自在に操れるだけでなく、その次の段階である"魔新機"を駆ることもできる。」

 さっきもでた魔神機(アルティノイド)。その存在は何なのだろうか。

剛士郎「無論、君が未来で乗っている機体も、その"魔神機"に当たる。」
暁「未来の俺が魔神機に?」

 吉良は頷いた。

レドナ「待ってくれ。今の話と繋げると、魔神機は未来にあるんだろ?
    それをどうやって奪うんだ。」
剛士郎「行くんだよ、未来へ。」
暁「!!」
淳「えぇっ!?」

 驚きの声がハンガーに響いた。

淳「で、でもどうやって未来に行くんですか!?
  ワープゲートは未来にしか無いんですよ?」
剛士郎「私の父が一基だけ、そのワープゲートを往復分のエネルギーと共に残していたのだ。
    もしもの時が来るまで、その存在は伏せていたが・・・。」
レドナ「だが、今暁がARSに入ったことで未来は改変されているんじゃないのか?」

 確かに、レドナの言うとおりだ。

剛士郎「私の父もそれほど馬鹿ではない。時間というのはその軸だけの存在だ。」

 頭が混乱しそうな話が始まった。

剛士郎「今という軸を元に、世界は真横へと広がっていく。いわば全ての確率が形成されているのだ。
    鳳覇君がARSに入った事象、入らなかった事象、入ってやめた事象、その全てが平行線上にある。」

 何となく分かる気がした。つまり今の話が分からない俺がいる世界があるということか。

剛士郎「その中で、私の父はこのワープゲートを作ったときの時間軸に設定して、その未来に行けるようにしている。」
淳「今がどうなろうと、その平行世界に行けるようにですか?」
剛士郎「あぁ、だからそのワープゲートの先には破壊者として存在する鳳覇君が必ずいる。
    そして、その鳳覇君から彼がのる魔神機を奪うんだ。」
暁「俺が乗る魔神機・・・。」

 機神をも超える存在を、未来は自動的に俺に託しているという事実に恐怖を覚えた。

剛士郎「その名は"エイオス"。神話に登場する"暁の女神"の名だ。」

 不思議とその時は"あかつき"というワードが出てきても怒りの感情は出てこなかった。逆に強大な存在であるということが感覚で分かった。

暁「エイオス・・・、暁の女神・・・。」

 その名を覚えるように、俺は繰り返して呟いていた。

淳「そのエイオスを奪うってことは、エイオスのコアとドライヴァーを破壊して、再登録しないと鳳覇君のものにならないのでは?」
剛士郎「時はいつであれ、鳳覇 暁という存在は偽りではない。一度未来へ行って、エイオスの存在を受け入れられれば今の鳳覇君も使える・・・かもしれん。」
レドナ「かもって・・・。」
暁「とにかく、どうであっても俺は未来へ行く。」

 既に俺の決意は固まっていた。未来へ行くことで絶望を覚えるかもしれない。でも進まないといけない。
止まったままでは何も変わらない。今からでも変えられる、輝咲にそう言われたのを思い出した。

剛士郎「うむ、頼んだぞ鳳覇君。
    ・・・っと、それと道案内役に榊君も同行させよう。」
暁「分かった。でも輝咲は辛いんじゃ・・・。」

 時を戻って、なお自分が見てきた世界へと進むという感覚は味わったことはないが、何か辛いものが引っかかる気がする。

剛士郎「これは榊君自身が望んだことだ。未来でやり残した事を済ませておきたいと。

 少しそのやり残した事が気になったが、そういうのには干渉しないほうがいいだろう。


 -PM05:12 ARS本部 B21-

 本部に到着すると俺たちは地下21階に集められた。一番下の階に値する地下ハンガーでさえも地下10階というのに、さらにその下があることに驚きだった。
エレベーターに乗った時、吉良が鍵を出して端末をいじっていた。すると地下11から21までのボタンが現れた。
 地下に進んでいくにつれ、空気が冷たくなっている気がした。

剛士郎「ここだ。」

 最下部の21階に到着すると、そこは中央に銀色の円形の機械とその端末以外は何も無い静かな部屋だった。
すでに部屋にはいつものメンバーが集合していた。

暁「これが、ワープゲート・・・。」

 始めてみるその形に、俺は食い入るようにそれを見ていた。

剛士郎「有坂君、準備を頼むよ。」
雪乃「了解です。」

 有坂が端末をいじりだした。だんだんと機械音がうるさくなってきた。円形のゲート内にバチバチと電気が走る。その中央の空洞に青い光の幕が現れた。
輝咲と会った日、ベランダから見えた光と同じ色だった。

剛士郎「それと言って滞在期間というものは無いが、なるべく今から48時間以内に帰ってきてくれ。
    この間にリネクサスが来ると困るからね。」
静流「この世界は任せておけ、ここは死守しておく。」
佑作「やっと治ったゲッシュ・フュアーも少し暴れたがってるからね。」
レドナ「俺もあいつには傷の借りを返さないといけないしな。」
暁「頼んだぜ、皆!」

 レドナが拳を出してきた。俺もそれれに拳をあわせた。

結衣「気をつけてね、輝咲ちゃん!」
かりん「ま、こっちはあたしらに任しといて、ゆっくりデートしてきな。」
輝咲「さ、桜さん・・・!」

 輝咲は少し顔を赤らめた。

雪乃「準備完了、いつでも行けるわ。」
剛士郎「それじゃあ、頼んだよ。鳳覇君、榊君!」

 俺と輝咲はそれに頷いた。ワープゲートに入ろうとすると、俺の左手を輝咲が握った。
俺もその手を強く握り返して、目を瞑った。心でタイミングを計り、振り返らずに一気にゲートの中へと入った。


 -2071年 1/7 PM05:12 場所不明-

???「風が変わった・・・?」

 ビルの屋上から町を見渡す黒髪の少年が呟いた。

???「ゲート反応確認できたよ。場所は結構近くだ。」

 茶色い髪をした背の低い少年がノートパソコンの画面を見ながら黒髪の少年に言った。

???「やっと来たか。それじゃ、ちょっとお出迎えしてくるよ。」

 黒髪の少年は、屋上を後にした。

暁「待ってろよ、過去の俺――。」


 -EP15 END-


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